彼が戻ってくるのを待つだけで疲れてきた。
ふと、隣に頂上から戻ってきたおじさんが座る。
おじさん、メモ帳を取り出す。
時間を見て記入・・・・そう、彼が会社の人に勧められた「時間を記録しておくこと」はどうやら富士登山においては常識らしい。
おじさんのメモを盗み見る。
「14時15分下山」


えっそうなの?
15分に下山しはじめたおじさんが到着しているということは、そろそろ戻ってきても良いんじゃない?
そう思いながら、登山道が見えるところまで移動した。
しばらくすると、彼が降りてくるのが見える。
かなりのスピードで降りてきていた。
遠くでも、すぐに彼だとわかるったので、学生の時校庭で体育の授業を受けている中から好きな人の姿がすぐにわかったよなぁと、妙なことを思い出した。

彼が戻ってきて、私はさっさと下りる気満々だったけれど、彼は多分9合目でもあまり休まずに降りてきているに違いないと思った。
ベンチに座って
「登れた。頂上まで行ってきた。頂上では泣いちゃった。」
そういいながら、彼はまた泣いてるみたいだった。
きっと私の顔を見て、感激がぶり返してきたに違いない。
「あぶなかった。サングラスしていなかったら回りの人にばれて、恥ずかしかった。」

少し休んでから、下山を始めた。
下りは体がとても楽で、彼が休む?と気遣ってくれたけれど、全く問題なかったです。
一気に元祖7合目まで降りる。
少し休むと、今度は彼が気持ち悪いと言い出した。
たぶん、それはお腹が空いているからだと思われる。
来るときに買ってきたおにぎり4個のうちの1個は登る途中で半分こして食べたけど
8合目で1個もらっていたのを私は彼を待っている間に食べていた。
彼が戻ってきた時に、おにぎりを食べたか聞いたら、お水を飲んだだけで
何も食べていないといっていたから、お腹が空いて気持ち悪いんだと思う。
けれど、休憩中には食べずにまた降り始めた。

しばらく降りると、やっぱり気持ち悪いというので
絶対にお腹が空いているんだと主張する。私は1個彼よりも余分に食べているから大丈夫なんだというと、納得したのか座っておにぎりを1個食べ始めた。
少し落ち着いたようで、しばらく休んでまた降りはじめる。

ずいぶんたくさん登ってきたなぁと思うくらい長い下りでした。
少し前にエベレスト登山隊のテレビを見たときに
「頂上はゴールじゃなくて中間地点だ」と言っていたのを思い出して、さらに納得してしまいました。
私はそうでもなかったけれど、彼は途中で足がつらそうでした。

新7合目を過ぎて、もうずいぶん降りてきたなぁと思ったころ
そろそろ登ってくる人たちも少なくなってきた中に
妙に元気な女の子2人。
一緒に休んでる人たちが口々に
「本当に戻ったほうが良いよ」
「その靴じゃ、穴開いちゃうよ」
「いや、本当にあぶないって」
と言っている。
どうやら、そこであった人たちのようだったけれど、よく見ると
その女の子たちは軽装。
手には水も持たずに、デジカメのみ。
水は分けてもらっているようだったけれど、靴は学校の上履きみたいな靴。
話を聞いているとどうやら
四人で車で来て、残りの2人は車で待っているらしい。
そして外国人のようだ。

周りの人の注意にも「あそこまでで帰ってきます」と次の山小屋を指して身軽に登っていった。
すぐ先で、女の子の4人組が下山しているのに会って
「頂上まではどのくらい?」と聞いていたらしく
朝から登っていたと聞いて驚いていた。これで引き返してくれれば良いけど。
でも、その足取りの軽さは見事なほどで、実はあの子達の国は高地で凄い心肺機能が発達してるのかもとか思ってしまいました。
でも、サンダルやヒールで高尾山に行く人はいても、あれだけの軽装で富士山に登る日本人はきっといないと思う・・・。

6合目に戻ってきたら、彼の具合が急に悪くなった。
突然戻し始めたけど、さっきのおにぎりはほとんど消化してしまったようでがぶがぶ飲んでいた水も原因だったみたい。
けれど、それで途端に気分がよくなったみたい。
「びっくりした。だって、頂上まで行っても苦しかったしなんともなかったけど、8合目でNaNaちゃんと会ってから具合が悪くなってきたんだよ。でも、これで楽になった。我慢しなきゃ良かった」

やっぱり、私の顔見てホッとしたんじゃない?安心したんだよ、きっと。

5合目から6合目は行きも帰りもそれほど大変じゃなかった。
車に戻って、一息ついて、さて。
どうする?これからおうちに戻る?それともどっかに泊まる?


*~*~*

あの、新しくなって、一ヶ月以内の日記しか書けなくなってしまったのでしょうか・・・・
この日付にしたくないんですけど。

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