お昼過ぎ、彼がそわそわし始めた。
私とのことなら、好きなだけ長引かせるくせに、相手がお母さんだと、違うのね。この辺が変な親子関係だと思うんだけど。

入籍は1月1日。
その予定で動くので、今日お母さんに「保証人」の欄に記入してもらおうとしている。
用紙を持っていくにあたり、彼は私の欄を埋めていない(と思っている)ことが気がかりだったようで、「もって行くんだから、早く書かなくていいの?」と言い始めた。
やっぱり。書いてないと思っている。
だから、用紙を渡すと「この人、いつの間に書いたの?」とか言って。

これから行っていいか聞いて、伺うことにする。
メールをもらった時に彼に「お母さんの話が子供のことなら、私ひとりのことではないので一緒に話をしよう」と言うと、彼は気軽に了解していた。

玄関に鍵をかけているとき、彼がつぶやいた。
「NaNaちゃん、大丈夫?」
「何が?」
「NaNaちゃんは、強いね。俺なんかお母さんに呼び出されたらビビッちゃうよ」
「それは、私のママに?」
「うん、NaNaちゃんのママでもうちのお母さんでも」
「そう。」
話をするのになんで怖がるのかしらと思う。

向かっている途中で彼は急に「きっとお母さんはNaNaちゃんと話をしたいと思うんだけど。一人で来ると思ってるし、NaNaちゃんと話をしたいんだと思うよ。」とか言い出した。彼は記入してもらう必要があるから一緒に行くけど、話しをするのは別のことかもしれないと思い始めたようだった。でも、もう一度「子供の話なら私一人のことじゃないんだから、2人で話をしなくちゃ」と言うと、しぶしぶ「わかった」と言っていた。

彼の実家の玄関を開けて、声を掛けて上がる。
「あれ、君も来たの?私はNaNaさんと話がしたいのよ。でも、一緒ならそれでもいいけど。」
「う〜ん、いないほうがいいなら、上に(自分の部屋)行ってるよ。」
「あらそう。」

彼の心の中から「やっぱり」の声が聞こえて、というより、その場にいたくない雰囲気がありあり。
まあ、いいや。どんな話かわからないけど、子供の話になったら呼べばいいんだから。
そう思って、椅子に座る。

早速お母さんが切り出した。
「私が思っていることを言うけど、NaNaさんの言いたい事も後から聞くから。私は人の話に聞く耳を持っている人間よ。」

最初は、子供のこと。
子供の話になった時に、お母さんの話をさえぎって
「子供の話なら、私だけのことじゃないので。」と彼を呼んでもらった。
しかも、最初「子供」の言葉が出た時に「私とのことですか?」とかわざわざ聞く。
だって、籍も入ってないのに、「子供」「子供」言われたって・・・とずっと思っていたものですから。

そしてそのまま、次はお墓のこと。
彼は、途中で何回も口を挟もうとしたけど、まずはお母さんが言いたい事を言ったほうがいいと思って止めて、お母さんに話をしてもらった。やっぱり・・・と思って聞いていた。もう、いろいろ話があっちいったりこっちいったり、同じ話を繰り返したりしてなかなか先に進まなかったけど。

で、どう思っているの?

とついに私の番にまわしてもらった。
最初に私が言ったのは、去年の流産のこと。
仁義は通しておかないと、この先上手く話が周っていかない。
それから、籍も入ってないのに、子供の話もお墓の話もないと言いました。

すると、「夏には大安の日を伝えたり、最初から反対しているわけじゃない」というようなことを言い出した。なんだかばかばかしいなぁと思いながら「けど、今の状況があるのですから」というと、「入れればいいじゃない。」と。彼にしてみたら、この言葉があれば良いんだから、たぶんほっとしていたことだと思う。すかさず「じゃあ、入れるよ」と応えていた。

そして、籍を入れるのを前提にして話をする。
「お母さんの気持ちはよくわかりました。子供のことは、○○さん(彼のことです。もちろん。)と2人で相談して決めます。お墓のことは、○○さんがちゃんと考えて、いいいようにしてくれるとおもいますので、お母さんはご心配なさらずに。」ときっぱり言ってしまった。それしかいえないもん。

するとお母さんは彼のことをさして
「この人の父親が、ギャンブルが大好きな人だった。彼は、体型も声も体質もそっくりだから、今は違ってもいずれそうなる。その時子供は鎹になるのだから、早く子供をと思っている。」とふざけたことをいいはじめた。
これには、非常に頭にきました。
子供のためと言いながら、離婚せずにけれど、両親がそろっている時の雰囲気はあまりいいものじゃなく、子供を通して会話をしたり、橋渡しをさせたり。冗談じゃない。鎹にされる子供の気持ちを考えたことがあるのかと言いたかった。
それに、彼のことを全然わかっていない。彼には彼の理屈がある。ギャンブル好きなのは知ってるけど、ちゃんと貯金もしているし、何より彼はお家が大好きなんだもん。「今は」かもしれないけど。

冷静になろうとしてそれでも、「子供は鎹になんかならない。小さな子供のことで離婚する人もいれば、子供がいなくても添い遂げる人もいます。」と告げました。

お母さんには「NaNaさん強いわね」といわれました。「わたしなんて、なんたらかんたら」と・・・。

これ以上はもう話は必要ないかと思った絶好のタイミングに彼が「じゃあ」と用紙を差し出した。
「あら、持ってきているの?」と言いながら、お母さんは二つある「保証人」の欄のひとつに書名捺印。
「後は、そっちで書くんでしょ」と言ってペンを置いた。

最後に「あなたたちは別れるとおもうわ」とか言われてしまいました。
家に行ってから二時間が経っていた。

*〜*〜*

この後、近くに出来たステーキ屋さんに誘われて、3人で少しはやめの食事。
食事中、お母さんは
「貴女にこんなことをいうのはなんだけど、やっぱり最後は娘に看てもらいたいものよ」というから
「そりゃそうですよ。当たり前ですよ。」と激しく同意しました。

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