一応帰省ラッシュを警戒して、朝6時に家を出て、彼をピックアップして千葉へ向かう予定になった。
それをめざして、出るときに連絡する事に。
彼は、それより一時間早く行動する事を、提案したけれどちょっとそれはいくらなんでも早すぎるよ〜。
実は私ってば、お弁当を作る事を計画していたので、5時に家を出るとなると何時に起きなくちゃいけないの?むりむり。

6:00彼からメールが入る
「ちゃんと起きられてるのかな?そろそろ出ますか?」
支度がほとんど終わって、車に荷物を詰めようとしている時だったので、出るときにメールしたら20分になっていた。
あらら。
7:00彼をピックアップ!
そこで、最初に見せたのはお弁当。
「お弁当作ってきたの?だから遅刻したの?ねぇねぇ」ってちょっと嬉しそうなんですけど。
「遅刻ってことないね。で、これは朝ごはん?お昼ご飯?」

とにかく出発してアクアラインをめざす。
アクアラインてものすごく高い気がしていたけれど、普通車3000円軽自動車2400円ならいいんじゃないかしら。
ぐる〜っと回らなくていいし。
今回一度も給油せずに家まで帰ってきたのです。前回は帰りに一度給油していたから走行距離が少ないのが良くわかり、
身体も楽だし、これは便利だと思いました。

海ほたるでお弁当を広げる。
もちろん定番おにぎり。
いい感じに茹でられた半熟ゆで卵と、デザートのつもりのオレンジを残して片付けた。

千葉に入り海沿いを走る。
海辺へ降りられそうな場所を見つけて車を降りた。
浜辺と言うよりも磯。そこでヤドカリやうみうを見つけてしばし遊んでいたとき。
彼が「見つけた。」何かを取ろうとしてかがんだ瞬間。

ポチャ・・・

あっと思うまもなく海水につかる携帯電話・・・

ズル・・・

すぐに取り上げるのかと思いきや、自分の足元を確認してやっと拾い上げた。
その間彼曰く5秒。
私は10秒も浸かっていたように感じていたのですけれど・・・・

海水まみれの携帯を手に取り、嫌な空気が流れる。
「やっちゃった〜。」
「やっちゃったね〜。」
タオルを手渡して、水分を除去し始めた。
「無理かな〜?」
「海水だからね〜。一回は電源はいるらしいよ。で、その隙にデータを移動させるんだって」
ってどこで聞いたかわからない話をした。
バッテリーも取り出して見ても×印のシールは滲んでるし、ボタンの間から水は出てくるし、アンテナが収納されている所も水滴が動いている。
同じ機種を使っているので、二つを比べて、いかに水害を受けているのかを確認する作業が続く。

ぁ〜あ
変なため息をつきたくなって、でも彼が一番がっかりしているんだと思って変な言葉はできるだけ飲み込んで。
携帯が使えないとやっぱり不便だから、ショップへ行こうかと相談する。

でも、ひととおり水気をふき取った彼は、鋸山に行く気満々になった。
私は携帯が気がかりで遊ぶ気持ちにはなれなくて、でも、彼の言うとおりにロープウェイ乗り場の順番待ちの列に並んだ。
携帯はバッテリーと本体をばらばらにして、ダッシュボードの上に置き去り。

鋸山行ったことありますか?
かなりハイキングですよね。階段も多いし。
手を繋いだまま彼は「歩くの早かったら言ってね。」と何度も私に声をかける。
「うん」
昔小学生のときに登った山で、引率の先生が私のそばを片時もはなれず「大丈夫?」と声をかけ続けてくれたときのことを思い出した。
後から日記の返事に「今にも倒れそうだった」と書いてあって、ちょっと驚いたっけ。
小柄な上に色が白かったから、「病弱」な印象だったんだと今考えればわかりますが、山育ちの私は、人が思うよりも山道には慣れていて、おまけに従姉妹と同い年で、祖母に一緒に育てられたので、散歩の途中どんなに疲れてもおんぶや抱っこはしてもらえなかったりして、足はとても丈夫だったから。
それでもそんな話は子どもの時のこと。
帰り道はさすがにばててしまって、彼も手を繋いだまま「自分のペースで登っていいよ」と言ってくれた。

ロープウェイの切符をだそうとかばんを探ると妙に冷たい・・・
何かと思ったら、お弁当の半熟卵がかばんの中でつぶれていた。
「あらら〜」
「今日はいろんなことがあるね」
「どうして車においてこないの?」
「だって車の中暑いから、悪くなっちゃうと思って。まだ持ってた方がいいかと思ったの」
「今日はいろんなことがあるね」
「ねぇ、いろんなことあるけど、怪我だけはしないようにしようね。」

時期が時期だけに、公共の乗り物に少し信頼がおけないと感じたのは乗ってから。
しかも「いろんなことある」し。
高さ20mの箱の中で二人で顔を見合わせて「ちょっと怖いね」と小さな声でつぶやいた。
でもこのまま落ちちゃっても彼と一緒ならいいか〜と思ったものホントです。

二時間後車に戻り、暑い車内で、頭の隅に追いやっていた携帯を目の前にして
「さてと。電源はいるかな?」
「え〜いれるの?一回は入るらしいよ。で、その間にデータを移すんだって」
ほんと、どこで聞いてきたの?私。
「いれてみる?」
「え〜だから一回は入るらしいよ。で、その間にデータを移すんだって」

ぶちっ
あっ電源いれちゃった。

ちょっと動作は変なものの待ち受け画面のごんすけが表示される。
「入った!」
「入ったね」
「でも圏外だ。あなたのは?」
「三本ちゃんと立ってるよ」
「うっだめかな?アンテナがだめなのかな?ショップに行こう。ちょっと持ってて」

「ねぇ、アンテナ一本立ったよ」

「おっ二本になった」

「三本揃いましたが・・・」

ここで車を停めて私の携帯から彼の携帯にかけてみる
「もしもし」
「もしもし」
「聞こえにくいや」

なんとメールの送受信はなんともなくできる。
もう一度電話をかけてみると今度は普通に通話ができるようになった。

「直ったね。ありえない。」
「最初から壊れてないから」
「ありえない。でも良かったね。」
「ねぇ、誰だと思ってる?エンジニアだから。」
「だって海水だよ。海水だから良かったのかな?」
「良く乾かしたのが良かったんでしょ。完全に乾いてからだから。」
「でも、そこ ここに潮吹いてたよ」
「ね〜」
「直ったね。よかったけど、ありえないね。」
「だから、最初から壊れてないから。」

その後も、彼の携帯は普通に使えている。
水に浸してなおも使えるなんて、聞いたことない

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