後ろからついて歩く私に バトンをもらうみたいな手で「はやくおいで」と伝える。
ほかの人にはわからないけれど 私だけに伝わる。うれしい瞬間。
彼は手をつなぐよりも 腕を組むほうが好きだと言う。
けれど 手をつなぐことに慣れてきたみたい。
子供に手をつなぐことを促すように手を差し出す。
前は力の入らない手で 私がしがみつくように手をつなぐのが好きなのかと思っていたけれど 最近の彼は手を握ってくれる。
「ぎゅっ」微妙に力のこもる手のひらが どうしてこんなに幸せな気持ちにさせるのかしら。
返事をするみたいに 少し強く握るともう一度応えてくれる手。
何を話しているのか 会話になっているのか本当にところはわからない。
けれど 二人の手は話している。
言葉にならない たくさんの気持ち。

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