彼はテレビをつけながら、寝てしまう。
テレビを消したり、めがねをはずそうとすると

「みてる。」

みてないし・・・とおもいつつ、
「ごめんなさい」そのまま私はまた、眠りに落ちる。

今日はなんとか「みてる」といいつつもめがねをはずさせて、テレビを消させてくれた。
部屋の明かりを落としてわたしも、本格的に眠りに落ちる。

「かゆい!」
その一言で彼が飛び起きた。
続けて部屋の明かりを皓々とつける。
「蚊に喰われた!ここどうなってる?」
寝ぼけ眼で言われた場所を見てみると、確かに蚊に喰われている。しかも、全部で4ヶ所。
私はかなり美味しい血を持ってるらしく、その場に何人居ようとも私が一番先に喰われる。ことが多いのに、彼がそんなに喰われていても、私は無傷だった。
「あなたって、相当美味しいのね。」

「かゆい!絶対に退治してやる!」
彼はムキになっている。
私はかゆくないし、ねむいし早く寝たいんだけど、部屋は明るいし彼は殺気立ってるし。彼の空気が
「寝てるのかい、こんなにかゆいのに、ねるのかい。」といっている。
仕方ないから、絶対に見つからないとおもいつつも、探してみた。

しばらくして
「いた!やっぱりいた。」
彼の血をたくさん吸って身体が重い蚊は、ふらふらと漂っていた。
思わず反射的に叩いてみた。
 
パチン!

失敗

パチン!パチン!

大失敗

ここでヤツを見逃したら、後で何言われるかわからないから必死に目で追いかける。

『いる?』彼が私に聞いてきた。
彼は見逃したらしい。けど、わたしの視界にまだヤツはいる。
「いるいる。」
『俺が取る。どこ?』
「あの、ドアノブのところ」

ティシューを持った彼は、でも、採りきれなかった。
またもや漂う蚊。
でも私はその行方をしっかり捉えていた。

「こっちこっち。あそこ。」

ぶちっ

と音がしたかと思うくらい、まんまとしとめた彼だった。

私たちの間に妙な達成感が生まれた。
ベッドに戻り、私はそのまま眠りに落ちる、が、彼はまたもやテレビを見始めてしまった。

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